公開: 2024年8月29日
更新: 2024年8月30日
イタリアの軍人ジュリオ・ドゥーエは、その著書「制空」の中で、戦略爆撃の重要性を提唱しました。戦略爆撃には、軍事施設などの特定の目標への爆撃を意図したものと、目標を軍事施設等に限定しない「無差別爆撃」があります。ドゥーエは、敵の人口密集地に対する無差別爆撃が有効であると主張しました。
1911年10月、イタリア軍の飛行機がトルコ・アラブ軍の拠点を目標として実施した手榴弾の投下が、史上初の飛行機による爆撃とされています。1914年にドイツ軍によって実施されたバリ爆撃がきっかけとなり、日本軍も、1914年9月の青島市街の爆撃が行わました。
国際法の視点では、戦略機爆撃の1形態である、敵国の地域を限定して無差別に爆撃を実施する「絨毯爆撃」は、ハーグ陸戦条約において禁止されており、ジュネーブ諸条約においても、軍事目標主義の原則に基づき、禁止される傾向にあります。しかし、無差別爆撃のために開発された爆撃機の保有は、禁止されていません。日本の司法では、1945年の原爆投下に関する東京地方裁判所による1963年の判決では、「市民を目標とした無差別爆撃は、国際法に反する」との判断が示されています。
戦略爆撃の有効性に注目した空軍の関係者から、無差別爆撃が戦争遂行の有効な手段であることが主張されていましたが、イギリスの国際法学者、L.オッペンハイムは、その著書で、「無差別爆撃は、標的を限定していない」との視点から、「国際法の精神に反する」としました。ただ、21世紀の現在に至っても、無差別爆撃を禁止していない国家は、相当数あります。米国やロシアは、その代表例です。